日本の水産資源管理の現状と課題

2017年 5月 24日 - カテゴリー: 釣りのヒント集

2017年4月25日、26日、27日と、Pacific Bluefin Tuna International Stakeholders Meetingと言う、太平洋クロマグロの資源管理に関する国際会議に出席してきました。3日の開催期間中、私は初日と最終日は開始から終了まで参加出来ましたが、26日は自船の上架整備が予定されていたため、最後の1時間だけの参加でした。

更に2017年5月16日、17日と、早稲田大学で開催されたInternational Conference on Seafood Transparency and Sustainability(水産物の透明性と持続性)という国際シンポジウムにも参加させて頂きました。

一釣り船の船長が、なんでこんな国際会議に出席しているのかと言うと、日本の水産資源管理のあり方に日々疑問を持っているからです。東京湾のスズキも巻き網でごっそり持っていかれたのと、釣り過ぎも含め、資源状態が年々悪化しています。東京湾の太刀魚も年々釣れなくなっている事は皆が感じている事でしょう。誰でも捕り放題、釣り放題、キープし放題では魚が居なくなるのは当たり前の話です。釣りも含め、漁獲規制を導入する事で、末永くより良い釣りを皆様に提供できると考えています。日本にもいつか必ずフィッシングレギュレーションを導入し、より良い釣りをいつまでも楽しめる様な環境に出来ればと考え、機会がある毎に勉強しに行っています。

何故私が太平洋クロマグロの資源管理に興味を持つのか?東京湾のルアー船であるKnot Enoughはクロマグロを狙いに行くことはありません。ごく稀に東京湾口でクロマグロの幼魚であるメジが釣れる事もありますが、狙って釣る事はありません。私個人もキハダ狙いで船に乗っていてクロマグロのボイルに出くわした事はありますが、クロマグロを狙いに行った事はありません。しかし、日本人が大好きなクロマグロは皆が注目してくれやすい貴重な魚です。多国間での資源管理の対象魚種でもあり、海外からも注目されています。そして、これからより良い資源管理へと方向転換がされようとしている最中の魚種がクロマグロなので、資源管理問題を勉強するには最高の機会という訳です。別記事でも書きましたが、問題はクロマグロだけではありません。これからクロマグロがきっかけとなり、日本により良い資源管理が導入されれば・・・との思いで勉強しつつ見守りつつ、ごく稀に声も上げています。

先のマグロ会議の内容に入る前に軽く予備知識を説明すると、太平洋クロマグロは現在、初期資源量比で97.4%が失われ、残り2.6%の資源量であると推測されている絶滅危惧種です。スーパーに行けば必ずと言って良い程並んでいる太平洋クロマグロ(本マグロ)ですが、絶滅が危惧される程の資源状態にあるにも関わらず、まだ捕り続けているのが現状です。養殖モノも天然の魚を太らせて出荷しているモノが多く、エサの問題も含め養殖だから天然資源に影響無しではありません。クロマグロの様に、広域回遊魚は日本近海のみならず、太平洋を横断したり、南半球に行ったり・・・と、各国間にまたがり生息しており、多くの国で規制を設けても、一国が乱獲を続ければ資源管理が上手く行かない可能性があるので、各国間に跨る資源管理が必要となり、この様な国際会議が開かれる訳です。

太平洋クロマグロは太平洋全域に広く分布していますが、産卵場は日本のEEZ内と一部台湾の海域でのみ確認されており、日本近海は太平洋クロマグロの資源管理において非常に重要なエリアと言えます。更に、太平洋クロマグロは太平洋沿岸の世界各国で漁獲されていますが、その多くが日本へ向けて輸出そして日本で消費されており、世界最大の消費国としても日本は太平洋クロマグロの資源管理にあたり、非常に重要な責任ある立場にあると言えます。

上記の様に、太平洋クロマグロの資源量は危機的なまでに減少し、日本は資源管理にあたり責任ある立場に置かれていますが、現状ではその責任を全くと言って良い程果たせていません。過去に何度となく開催されている国際会議の場において、世界各国から資源管理を徹底する様に求められても日本は国内の水産業の既得権益を守る事に終始し、資源管理を怠った結果、今や国際会議の場で逃げ場の無い条件を突きつけられるまでになってしまっています。そして、ようやく重い腰を上げた水産庁は、2015年より慣れない資源管理に着手しました。

そして各方面からの資源管理のやり方への反発の声が上がる中、2016年からは30kg未満のクロマグロの幼魚の総漁獲量に4007トンの上限を設け、まき網は2000トン、沿岸漁業は2007トンと振り分けました。規制が始まってからも各地の漁業者からは、反発の声が上がっています。捕ればお金になる魚を捕るなと言うから反発するのも当然と言えば当然ですが、持続可能な漁業に向け、今は我慢が必要なのは明らかです。

何故減ったか

そもそも何故太平洋クロマグロはこれ程までに激減したのでしょうか?勿論、捕り過ぎと言うのが一番の原因ですが、では誰が捕り過ぎたのか?犯人捜しをしても埒が明かないと言えば正論に聞こえますが、今後どの様に捕るかを考えて行く上で、どの様な捕り方をしたらまずいのかを考える事はとても大事な事と言えます。

今回の国際会議でも資源管理のABCというプレゼンテーションがISCのチェアマンであるアメリカ人のGerard DiNardoさんよりありました。各国を代表する様な科学者が集まる中、資源管理のABC、つまりイロハという題名の、正に資源管理の基本中の基本のプレゼンを行ったのには、そもそも資源管理のイロハのイの部分すらままならない日本の現状に対する皮肉もあったのでは?と私は感じました。もしかしたら私も含め、漁業者等、科学者では無い方々も多く来場していたので、ターゲットオーディエンスはそちらだったのかも知れませんが、私には有り難くも気の利いた皮肉に思えました。余談はさておき、そのイロハの中でも説明があった様に、幼魚を大量に捕獲する事が資源に対して非常に良くないのですが、日本のクロマグロの漁獲量の内、匹数換算で98%が幼魚となっています。ここに規制が必要な事は明らかで、今回もまずは幼魚の漁獲を減らそうという事で規制が導入されました。漁獲規制は大事で必要ですが、その割り振り方と取り締まりに未だ問題を多数抱えているので、漁業者からの反発が多いのが現状です。

もう一点、Gerard氏のプレゼンの中で繰り返し言われていた事は、資源管理において重要なのは資源量に応じて、ここまで資源量が下がったら規制を強化する、更に次の目安の点まで下回ったら漁獲を禁止にする等、資源量を著しく低下させないためのボーダーラインを予め決めておき、そのガイドラインに従って管理をするという事でした。そして、資源が危機的なまでに減少したら禁漁にするのが常識という事を何度も繰り返し言ってました。現在、太平洋クロマグロは常識的に考えると禁漁にすべきところまで資源が低下してしまっています。事前にここまで来たら規制強化、ここまで来たら禁漁と決めていれば、そのガイドラインに沿って管理するだけなのですが、これから決めるとなると、じゃぁ今すぐ禁漁ね・・・って話になかなか日本が首を縦に振りません。これは、クロマグロだけでは無く、これから資源管理が必要な日本沿岸の多くの魚種に対して言える事かも知れません。今後資源管理を強化していくにあたり、現状の資源量が既に禁漁が必要なレベルだと認める事は、当事者にとってはかなり難しい事の様です。因みにですが、東京湾のスズキは私の認識では2009年から下降の一途で、2013年位の資源量である程度の漁獲規制が必要な水準まで落ち込み、2016年の時点で禁漁にすべき水準まで資源量が落ち込みました。現状は悪化の一途なので今後が心配です。東京湾で言えば、メバルも減少傾向、太刀魚も危機的状況にあると言え、今後の課題は山積しています。

話をクロマグロの資源管理に戻します。上記の様に、まずは幼魚の漁獲を減らす事が大事な一方で、問題は幼魚の漁獲だけでは無く、各方面から巻き網に対する批判が上がっています。特に産卵期に集結する親魚を一網打尽にしてしまう巻き網漁に対する批判が数多く上がっている事は今では広く知られています。これに対し、水産庁の答えとしては産卵期に捕ろうが他の時期に捕ろうが、資源に対する影響は同じとの答弁を繰り返しています。資源管理のイロハ・・・では無いですが、海外の様々な魚種に対するレギュレーションを見てみると、やはり幼魚を守る体長制限と、産卵を守る産卵期の禁漁等が同時に行われているケースが非常に多いのです。この部分に関し、各方面から様々な会議の場で指摘がありますが、水産庁は頑なに産卵期の漁獲規制の必要性を認めません。しかし、今回の会議では今までとは少しだけ言い方が変わり、産卵期の漁獲が資源に悪影響と示す様な科学的データが無い・・・との事でした。これだけ指摘が上がっているのだから、その様な科学的根拠が今のところ見出せないとすれば、より慎重に調べる義務が水産庁にはある様に思います。この部分は今後に期待です。そしてISCの議長は、例えば産卵期を禁漁にしたら資源量がどの様に変化するか・・・等のシナリオケースを調べる準備はあるので、文書でリクエストしてくれとの事でした。

そして、会議期間中の休憩時間や終了後の時間を利用し、海外から来ていた科学者達10人前後とお話しをさせて頂いた所、ISC議長も含め、100%全員が産卵期の巻き網漁が資源に悪影響だと断言していました。水産庁の手前、おおっぴらには言い難いのでしょうが、皆が皆、産卵期の巻き網は最悪だと口を揃えて言っていた事が印象に残りました。水産庁御用達の科学者と、各国を代表して来た海外からの科学者との間に、この様な認識の差があるのは日本の水産資源管理に対する研究が遅れているのでしょうか?それとも、日本だけが最先端で違う意見を持っているのでしょうか?それとも日本の科学者は何らかの理由で事実を隠すなり、捻じ曲げるなりしているのでしょうか?私の見解では、日本の沿岸の魚の枯渇ぶりを見る限り、日本だけが最先端・・・と言う選択肢だけは無い様に思ってしまいますが、皆様はどう感じますでしょうか?

そして、お話しさせて頂いた海外の科学者達から国内の遊漁者や関係団体からも、より良い資源管理になる様に声を上げ続けてくれとエールを頂きました。そもそも漁獲データや資源管理を遊漁抜きでやっている事が、データの欠落や資源管理の欠陥の象徴だとも言う方も居ました。大西洋クロマグロの場合、遊漁者も含め、釣り上げられたクロマグロは24時間以内に報告する義務があります。勿論、未報告等の違反が皆無とは言いませんが、海外では取り締まりも厳しく、それなりの人員が配置されています。国内で遊漁が置き去りのまま資源管理が行われている事態は、早急に解決すべき問題の一つです。

何故捕り過ぎたか

資源の減少の原因が捕り過ぎにある事は間違い無いのですが、何故捕り過ぎてしまったのかも考える必要があると思います。まず、高値で取引されるクロマグロを狙う漁業者が多すぎる事は否めません。この高値で・・・という所は一つのキーワードで、今や絶滅が危惧されるまでに減少した太平洋クロマグロですが、冬場の脂の乗る時期に一本釣り等で捕られ、丁寧に処理されたマグロには本当に高値が付きます。しかし、普段我々がスーパー等の店頭で見ている太平洋クロマグロはどうでしょう?本当に高値がついているかと言えば、そうでも無く、私の様な一般庶民でも気が向けば少し背伸びして買える程度の値段で売られているモノも多いです。安い回転寿司でも、300円やそこらで絶滅危惧種の太平洋クロマグロが回っている事もあると聞きます。

何故、絶滅が危惧される程に減少しているクロマグロが必ずしも高値で取引されないのでしょうか?一番の原因は、供給過多にあります。つまり捕り過ぎ。絶滅危惧種が供給過多で市場でダブついているなんて全くおかしな話ですが、経済優先で物事を進めて来た結果、誰も何の疑問も持たずに絶滅危惧種が市場で余ってしまっている訳です。水産庁の一番の仕事は「水産物の安定供給の確保」とありますので、どんなに太平洋クロマグロが絶滅危惧種となって、日本の資源管理を海外から非難されても、しっかりと供給を確保しているので、水産庁は与えられた役割を実に見事に果たしている訳です。この水産庁に与えられている役割のため、私の持論では水産庁に資源管理を一任させるべきでは無いと考えています。供給し続ける事と、必要な規制を必要に応じてかける事は相反する事で、同一組織内でこの二つをこなそうとすると、どちらかを優先せざるを得なくなり、一番の役目である、水産物の安定供給を優先してしまいます。そして今の日本のジリ貧の海がある訳です。他の記事にも書きましたが、資源管理は環境省がやるべきで、その枠組みの中で如何に捕るかを水産庁が決めれば良いと思います。ここは政治の仕事なので、政治家の方々にもこの問題に気づいて欲しいと願いますし、機会があれば働きかけもしていこうと思います。

この水産庁が背負う使命の、水産物の安定供給を図るために一番の近道が、漁業の大型化。巻き網の様な非常に効率良く大量に魚を捕れる漁業を水産庁はこれまで補助金を出す等して支援してきました。そのおかげで我々はアジ、イワシ、サバ等のいわゆる大衆魚をいつでも安く購入し、食べる事が出来ています。しかし、そのせいで多くの魚種の資源量が減少してしまいました。そして、捕るモノが次々と減ってしまった巻き網が目をつけたのが、太平洋クロマグロ。産卵期に群れが集結する時を狙い、一網打尽にして売れ残る程大量に安値のマグロを流通させました。今や絶滅危機のクロマグロも巻き網で捕れば大衆魚と言う訳です。

脂の乗る時期に一本づつ捕って、丁寧に処理されたクロマグロは正に高級魚で、なかなか庶民の口には入りにくい値段ですが、産卵前後の味の一番落ちる時期に巻き網で大漁に捕られ、たいした処理もせずに出荷されるマグロは美味しくないので買い手もつきません。値段が安いので、最終的には量販スーパー等で叩き売られています。マグロを大衆魚と呼ぶ事が正しいのかどうかは知りませんが、大衆魚と言って良い値段で売られている姿は良く見ます。太平洋クロマグロをこの様に大衆魚にしてしまった結果、漁獲圧に耐え切れずに資源が崩壊してしまいました。

本来、持続可能な漁法と漁獲量で捕れば、クロマグロは高級魚です。クロマグロは美味しい!と言うブランドイメージがあるからこそ、美味しくない時期のクロマグロや美味しくないサイズのクロマグロまでもがそのブランドイメージに便乗して売られる訳です。しかも一般大衆は、叩き売りの美味しくないクロマグロを見て、クロマグロはおよそこれ位の値段で買える・・・と言うイメージを作り上げてしまいます。一度安くで買った消費者は、パッと見似た様なモノが3倍、5倍、10倍の値段で売られていてもなかなか買いません。正にブランドイメージの失墜。本来の適正価格でマグロが売れなくなってしまうのです。クロマグロは本来高級魚であるべき魚で、自然のキャパシティーを超えた漁獲をしてまで大衆魚にすべき魚ではありません。絶滅危惧種の太平洋クロマグロを巻き網で大量捕獲すると、この様に全体的な値崩れまでをも引き起こしかねず、誰も得をしないシステムとなっています。一刻も早く規制をかけて止めさせるべきですが、まだ野放し状態です。

今回の国際会議の締めくくりでも、水産研究・教育機構の理事長である宮原さんから、「産卵期のマグロは経済的には価値がないわけだから、経済的に価値がある獲り方をすべきだということは論を待たないわけで、産卵に入った魚を獲るのは絶対に避けたほうがいい。」との言葉がありました。責任のある立場にある方からの素晴らしい言葉です。後はこれを実現させるのみです。今後、幼魚の漁獲量の規制に重ね、産卵期の巻き網にも規制が入る事を願うばかりです。水産庁の素早い対応を願います。

問題だらけのマグロの養殖

上にクロマグロは供給過多と書きましたが、その要因の一つが養殖マグロ。養殖は水揚げが天候等に左右されにくく、水産物の安定供給を図る上で欠かせない存在です。養殖と聞くと、天然資源には影響を与えない様なイメージがありますが、餌はほぼ全て天然の魚に頼っています。養殖をすればする程、エサとなる天然の小魚(サバ・イワシ等)を捕らなければなりません。特にマグロの養殖は他の魚種と違い、ペレットでは無く生餌が使われる上に、マグロを1kg成長させるのに必要な餌は15kg前後と言われており、例えば2kgのメジを50kgにして出荷するためには700kg以上の天然の小魚を餌として与えなければなりません。更に、50kgのマグロから皆様が大好きな刺身はおよそ25kgとれます。イワシやサバを700kg使って、25kgのマグロの刺身を生産しているので、やはりマグロはぜいたく品で、これを日本人皆がお手軽に食べようとすると、自然に負荷がかかり過ぎてしまうのは火を見るより明らかです。売れるから・・・と、経済優先でどんどんマグロを養殖すると、海のキャパシティーをすぐにオーバーしてしまう事は理解に難くないと思います。

更にマグロの養殖は、その大多数を天然の種苗に頼っています。近大マグロという、人工孵化の養殖マグロが話題になりましたが、コストや技術の問題がまだ多く、主流は天然のマグロの子供を生け捕りにして、養殖施設に入れて育ててから出荷するという方式です。そしてこの天然種苗と言うのが、上にも書きました30kg未満のメジの漁獲規制の対象でもあります。日本でのクロマグロの漁獲の98%がメジと言われてますが、その背景にはマグロ養殖がある訳です。養殖のマグロだから、自然に優しいなんて事は一切ありませんので誤解したまま購入を続けないで下さい。

今季、日本は30kg未満のクロマグロに関しては4007トンの漁獲枠があり、資源管理にようやく着手した訳ですが、様々な問題点があり、結局は国際的な約束事である4007トンの枠をオーバーしてしまいました。捕り過ぎてしまいました、すみません・・・では、日本の国際的な信用がガタ落ちです。既に水産分野では国際裁判でも敗訴している調査捕鯨を強行する等、信用も何もあったモノではありませんが、更に恥の上塗りをやってしまっています。こういった事態に対し、昨年のWPCFCの国際会議の直後に外務省から水産庁へ「水産という狭い業界のイザコザで、日本のという国の名や外交関係を傷つけてほしくない」と苦言を呈したとの報道があった程です。

しかし、よく考えてみて下さい。正確な数字は持ち合わせていませんが、この捕り過ぎた4007トンの内、少なくない数のメジが養殖用としてイケスに入れられた訳です。4007トンの漁獲枠をオーバーしてしまったのなら、最低でもオーバーした分のマグロをイケスから放すべきだと考えるのは私だけでしょうか?勿論、捕った当時2kgのマグロが今は10kgだとしても、当時の重量換算で、つまり捕り過ぎた分の当時の匹数換算で出来るだけ迅速に放すべきです。あまり長い事養殖施設に入れてしまうと野生が失われ、自然界で生きていけなくなってしまうので、迅速に放す事が重要です。仕事の遅い水産庁のやる事ですから今季がもう手遅れなら、来期からはこういう事も考慮すべきです。

それとも、捕ってしまったモノは仕方が無い・・・と言う事なのでしょうか?例えばこれが、同様の事が他国で起きたとして、捕り過ぎた分がまだイケスで生きていると聞いたら、まずはそれを放すべき・・・と考えませんか?どのイケスから放すのか、そのコストは・・・等の事情は違反した国内で解決するべき問題で、まずは迅速に逃がすのが筋というモノだと私は認識しています。国内での調整が上手く行かないから逃がせません・・・なんて話は、同様の枠組みで資源管理している関係各国は納得しないでしょう。

私はそのコストは、各県に振り分けられた漁獲枠をオーバーしてしまった県が、オーバーした分に合わせて支払うべきだと考えます。そしてその負担は各県から各漁協へと、オーバーした分に応じて負担は振り分けられるべきです。捕り過ぎた分は、捕り過ぎた漁業者の収入になっているので、違反操業で収入を得た漁業者が最終的にはそのコストを支払うのが筋だと私は考えます。そのコストを税金から支払い、国民全員に負担を強いるのは筋違いというモノ。漁協の中でも、真面目に規制を守った者とそうで無い者がいるかと思います。必要ならば漁協内でも各漁業者に負担を強いれば、最終的には規制が守られる様になるはずです。それでも回収出来なかったコストに関しては、規制の周知や罰則を設ける等の然るべき権力を持ちながら、結果的には国際的な約束事を守れなかった水産庁に責任があり、水産庁の職員や各県の水産課の職務怠慢と言わざるを得ないので、彼らの給与からそのコストを支払うべきです。仕事の出来がイマイチで収入が減るのは、自分で事業をやっている人ならば当たり前の事で、公務員という椅子に座っているから仕事が出来なくても給与が貰えるなんて話はおかしいと思います。

勿論、今すぐに私のこの記事がきっかけでメジが再放流されたり、水産庁職員の給与がカットされる事は無い事は知ってますが、漁業者や関係者は特に危機感を持って崩壊寸前のマグロ資源の管理に向き合って欲しいと願います。

太平洋クロマグロと遊漁

現在、30kg未満のメジの漁獲規制が各県で行われていますが、それと並行して遊漁にも自粛願いが出されています。漁業者が捕り控えてるんだから、遊びの人も控えなさいよ・・・と言う事です。これ、至極真っ当な事に聞こえますが、実は大いに問題があります。

問題点の一つは、30kgという線引き。日本が如何に資源管理に慣れていない国なのかを象徴しているのが、30kg未満という規制。30kg前後と思われるマグロが釣れました。さて、これは30kg以上でしょうか?30kg未満でしょうか?船の上で正確に魚の重量が量れない事は、少しでも船に乗った経験のある方なら知ってます。規制対象だからリリースするか、30kg以上だから水揚げするかの判断が、魚が生きている内に出来ないのです。更に言えば、本当は31kgの魚でも、美味しく食べて頂くために必要な下処理をしてしまったら30kg未満になってしまうかも知れません。通常、市場におけるマグロの重量はエラやワタ抜きの重量となっています。規制はどちらの重量を指しているのでしょうか?通常、海外等の事例を見ても、未成魚の水揚げを抑止するための規制は重量ではなく、体長(鎖長)で管理します。体長で管理する事で、船の上、もしくは船べりについたメジャーに沿わせてみて、素早く体長制限より上か下かを見極め、スムーズにリリースが出来るからです。重量での規制は私の知る限りは聞いた事もありません。勿論、資源管理の理論上30kgを目安にするなら、およそ何センチで何キロと言うデータは十分にある訳ですから、それに沿った体長制限をかければ、30kgの規制と同じ意味合いを持たせる事が出来る訳です。この様な資源管理の初歩的なミスを犯したまま、漁業者や遊漁者に協力を求めても混乱や違反、そして反発が相次ぐのは当たり前です。

更に言えば、30kg未満のクロマグロの漁獲規制の内容が国内で年間4007トンと決められ、それを沿岸漁業者に2007トン、巻き網に2000トンと振り分けられました。遊漁には全く枠が無いのが現状です。酷い話ですが、遊漁者から反発の声を聞いた事がありません。枠が無いとはつまり、規制が無いという事。何故遊漁に規制や漁獲枠が無いのかと言うと、そもそも遊漁は規制が無い状態でも年間16トン前後の釣果と推測されており、漁業と比べると資源に与えている影響は微々たるモノだからです。現在、漁業者の規制が急がれる中、そもそも影響の少ない遊漁なんかにかまけている労力が無いという事だと思います。しかし、今回の国際会議の参加者から、遊漁のデータを抜きに管理するとはつまり、データに穴がある事だという指摘を受けました。当然の指摘であり、今後すぐにでも是正するべきです。

日本では漁業は日本の食卓を支える大切な仕事、そして遊漁は遊びと言われています。しかし、マグロ釣りの殆どが遊漁船からの釣りである事を考えると、遊漁船は遊びでは無く、仕事な訳です。そして、漁業者がマグロを捕り過ぎて枠を超えたから、遊漁も自粛しなさいよ・・・と言われると、モラルのある釣り人や釣り船は自粛するのですが、遊漁船にとっては他人が魚を捕り過ぎたから自粛しろと言われると言う、何とも理不尽な理由で自粛を半ば強要される訳です。つまり、遊漁船業者にとっては仕事をするなと言われるという事です。こんなおかしな話はありません。

遊漁者から反発の声が出ない理由としては、漁獲枠や規制が無い現状で、言われているのは自粛のお願いであって、罰則を伴う規制では無いからではないでしょうか?いざとなれば知った事か!と、違反してもお咎め無しと言う訳なので、わざわざ規制してくれとの声も上がりませんが、遊漁が無視されているという事態は私は由々しき事態だと認識しています。

遊漁も本来なら別枠での管理が必要です。そして遊漁の場合は例えば与えられた漁獲枠の半分を消化した時点でキャッチ&リリースのみに切り替える等する事で、遊漁を続け、その経済効果は残しつつ、資源への影響を最小限に留める等の方法も可能な訳です。勿論、キャッチ&リリースをするには、使って良い針や生存を考えたファイトタイムの規制(つまり強い道具を使う事)等が必要です。これらの規制は海外では既に導入されているので、海外の事例から学び取り入れれば良いと思います。勿論、食べるために釣りたい方も多いのがマグロ釣りなので、私個人の意見が遊漁者全てを代表する訳ではありませんが、方法としてはそういうやり方もある訳で、選択肢の一つとして十分に議論の余地はあるかと思います。勿論、そうなっても産卵期は自粛する遊漁者や遊漁船は多いかと推測しますが、モラル任せでは無く、公平なルールが必要な時期に来ているのではないでしょうか?

遊漁の立ち位置

日本は遊漁者の立場が非常に弱いです。一番の原因は、遊漁者全体のマナーやモラルの低さ。そして、遊漁者のまとまりの無さ。たまの休みにのんびり釣り糸を垂れるのに、好きに釣りさせろ!誰かとまとまる必要なんか無い!と考える人が多いと思います。しかし、その考えが我々遊漁者の立場を弱くし、最終的には釣りをさせて貰えないという事態を引き起こします。日本国内にそこら中に立っている、釣り禁止の看板。これは、本当はその看板に不満を持っている遊漁者が沢山いるのに、誰も声を上げていない証でもあります。レジャー白書2016によると、日本の釣り人口は750万人。750万人がある程度まとまれば、凄い力を持つ事になります。海外等では遊漁は漁業よりも立場が強いと感じる場面も多いです。これは、遊漁者がまとまって声を上げているからに他なりません。因みに日本の漁業者の人口は16万人です。釣り人の方が圧倒的に多いのです。因みに遊漁者は漁業者を対峙しろと言っているのではありません。限りある水産資源を管理していく上で、遊漁者も水産資源の利用者として考慮されるべきだと考えている限りです。そして、同じ水産資源の利用者として、漁業を尊重する義務もあると思います。遊びで釣った魚を売買する事が未だ許されているのが日本ですが、私に言わせれば釣った魚を売るのが許されるのは漁業者に限られるべきです。遊漁の魚を流通させる事が、漁業者の首を絞める事は火を見るよりも明らかで、この辺りは素早く規制されるべきだと考えています。

因みにですが、今回の国際会議にはJGFAのメンバーとして出席させて頂きました。海外ではIGFA等が遊漁者の筆頭団体として発言力があります。日本でも遊漁者の立場を向上させるには、遊漁者がある程度まとまり、政治力を持つ事が必要になってきます。国際会議に出席して海外からの来賓の方々と言葉を交わしている内に、今後の釣りを巡る環境を良くするためにはやはり遊漁者が政治力を持つ事が大事だと痛感しました。今後のJGFAの活動に期待したいです。

終わりに

また今回も思う所を長々と書きました。普段は船の上でプカプカしている無学な釣り船の船長である私ですが、日々魚と向き合っていると黙ってられない問題点を数多く目にします。最後まで読んでくれた方が数名居ると思います。最後まで私のとりとめのない文章にお付き合い頂きありがとうございました。

私の願いはただ一つ。日本国内の遊漁を取り巻く環境をより良い状態にしたい。

それにはフィッシングレギュレーションの導入が不可欠ですし、遊漁者のマナーとモラルの向上と、遊漁者の社会的地位の向上も必要です。勿論、魚が居なくては釣りは成り立たないので、今回のテーマである資源管理も大切です。同じ資源を利用する漁業者とも連携して行かなければなりません。遊漁が資源を食い潰す様な事があってはなりませんし、漁業も然り。日本は淡水・海水共に極めて恵まれた自然環境を有していますが、全くと言って良い程適切に管理されておらず、魚は減る一方で、釣り場も減る一方です。釣りという素晴らしい趣味を謳歌出来る環境を皆で作って行ければと思います。

狙いの一匹の魚が喰いつく、全てはその瞬間のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017-05-24  »  fishtokyo

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