日本の水産資源管理の必要性を声高く訴えているグルーパーボーイズ代表の茂木さんからお話を頂き、水産庁主催のマグロ会議に参加してきた。日本の釣り場の水産資源管理に大いに興味のある身としては願ったり叶ったりの機会なので、二つ返事で参加を決めた次第だ。
今回の会議は全国から太平洋クロマグロの漁業者を主体に、水産会社や研究機関、メディアまで、様々な人が一堂に会して開催された。私は遊漁者の団体である、JGFAのメンバーと言う事で参加させて頂いた。
前半部分で水産庁からマグロ資源の状況と管理の方向性について説明があり、後半部分は参加の漁業者から要望や質問等を受けていた。
私は資源管理には興味があるが、今の所クロマグロ釣りはやらない。クロマグロに関しては利害関係の無い立場なのだが、今回せっかく会議に参加させて頂いたので、一釣り愛好家として私の個人的な感想を書いてみたいと思う。この記事を書いているのは誰なのか?と、気になる方に軽く自己紹介。私は一釣り愛好家で職業は遊漁船の船長。東京湾から出船するルアー船で、クロマグロには基本的に縁が無い。過去に13年程アメリカで暮らし、資源管理先進国の豊かな漁場を目の当たりにした。日本の恵まれた海洋環境を考えると、現状は実に勿体無い利用の仕方をしていると感じている。しっかり水産資源を管理すれば、より良い利用が出来るはずである。
さて、本題に入りたい。
水産庁によると、3年前からクロマグロの資源管理を始め(始動が遅いが、過ぎた事に文句を言うよりもこれからの事を議論したい)、既に資源の回復傾向が見られているとの事。米国等から回復目標をもっと短期間に、更に上に設定する様に要望が来ているが、今の規制を続けていれば次第に回復していくので、急いで回復させる必要は無いとの説明があった。各漁業者の痛み(漁獲規制)が少ない様に、出来る限り現状を維持し、今ある漁を続けながら、ジワジワと回復させようというのが水産庁の考え。一気に回復させようとすると、厳しい規制をせざるを得なくなる。出来るだけ皆の不満の無い様に、かつ補償金等のお金の掛からない様にしましょうと言う事だ。水産庁の立場としては理に適った対応と言う訳だ。
しかし、当事者である漁業者の声は違った。既に枯渇しかかっているマグロ資源をいち早く回復させて欲しいとの声が多く上がっていた。水産庁は、資源は回復傾向にあると言っていたが、現場の漁師は回復していないと言う。会議室で増えた増えないの押し問答をしても仕方がないのだが、水産庁側は、我々は科学的根拠を基に話をするしか無いので、データが回復傾向を見せれば、回復傾向と言うしかないと言っていた。しかし現場を日々見ている漁師は増えていないと言う。答えはどこにあるのだろうか?これは皆様の想像にお任せする。
気になった点が一つ。多くのメディアが来ていた会議だが、水産庁側の発表が終わり次第全員残らず撤収した事だ。現場の漁業者から多くの不満の声が上がった後半はメディアは一切居ない状態。ここを取材しないでどうする・・・と思ったのだが、水産庁のセッティングした会議で、メディアは前半部分までという事らしい。緘口令がしかれていた訳でも無いので私はここで記事を書いている訳だが・・・。
因みに水産庁の言う資源が増えたとは、ずっと右肩下がりだったモノが、過去数年、少しだけ上向いた・・・と言うレベルの話。漁業者の言う増えてないは、10年、20年前と比較して、全然居ないじゃないか!と言う話。ある意味論点がズレた論争なのだが、漁業者からすれば、ずっと資源管理を怠り、資源を減らし続けてきた水産庁の言う事等信用出来ない!と言いたい様なニュアンスの声が上がっていた。実際に、10年後に回復してなかったら、誰がどう責任を取るのか!との厳しい声も。私が責任を取ります!と言う水産庁職員が居なかった事は、残念であるが、当然なのかも知れない。しかし、資源が増えなかった際の痛手は、漁獲、つまり収入が低迷すると言う形で代償を支払う事になる。因みに我々遊漁者も、クロマグロ釣りをしたいと思っても、相手が居ないという事になってしまうし、遊漁者を乗せる遊漁船も商売上がったりになってしまう。
マグロ資源管理の難しい所は、太平洋クロマグロは広域を回遊して生活している所にある。ある程度は決まった回遊ルートを持ち、季節回遊するし、成熟度合いによって回遊ルートも変える。更には毎年少しづつ違う水温分布や潮流などに応じ、生息場所を変える事もある。特定の一か所に魚が来なくなった事が、すぐにその種全体が減ったという事だとは限らない。沿岸漁業者からすれば、地元の海に回遊しなくなったタイミングと、資源量が著しく減ったタイミングが重なれば、全ては資源管理に問題があるからだと思いがちだが、実はそうでは無い可能性もある。
しかし、現状では資源量の97.4%が失われ、残り2.6%しか資源が残っていないと言われている。これが大幅に回復すれば、回遊して来なくなった場所にだってまた回遊してくる可能性はかなり高いと言える。これだけ資源が減ったにも関わらず、環境要因で来なくなっただけですよ・・・では、誰も納得しないし、そのままで良い訳が無い。まずは資源を大幅に回復させる事が最優先だと感じているのは、私や一部の沿岸漁業者だけでは無いはずだ。
今回、茂木さんの代理で水産庁にいくつかの質問をした。大勢を前にマイクを持つ事に慣れていない私は大汗かきながら、しどろもどろで質問をしたのだが、上記にもある様に、やはり水産庁が把握している範囲では資源が回復の兆しを見せているのでは?と言う回答があった。塩釜港で水揚げされていた巻き網のマグロが抱卵していたかどうかの問いに、抱卵していたとの回答があった。これは、水産庁の説明によると、資源が回復の兆しを見せていて、過去に産卵の記録のある伊豆諸島等を含め、今後は現状では産卵場所となっていない場所でも産卵行為が見られる様になるだろうとの事。これが本当なら歓迎すべき事なのだが、産卵期の漁獲に規制が無い現状では、他の場所でも巻かれるのでは?と心配は尽きない。
産卵期の漁獲について、水産庁は規制する気が今の所無い様子であった事も報告したい。水産庁曰く、成魚の漁獲は産卵期に捕ろうが別の時期に捕ろうが同じと言い張っていた。産卵前に捕ろうが、産卵中に捕ろうが、その魚が居なくなり産卵出来なくなる事は同じ・・・と言う理論、ぱっと聞いただけだと一理ある様に感じるが、大きな間違いだと個人的には思う。産卵期には産卵を控えた成魚が集結するのだ。多くの魚種において言える事なのだが、この状態は非常に魚を捕りやすいのだ。つまり、獲れ過ぎてしまう。2016年のデータで言えば、一時はこの産卵期を狙った巻き網でクロマグロが捕れ過ぎの供給過多になり7月3日の境港ではキロ200円まで値が下がった。絶滅危惧種のクロマグロを捕り過ぎて叩き売りにする事を許しているなんて、とんでもない話だ。勿論、捕れ過ぎだけが安値の理由ではなく、産卵期は味も落ちている上に、巻き網漁で捕っているので漁獲直後の後処理が悪いので品質が悪い。これらのマグロを捕らずに冬に一本釣りで捕れば何十倍の価値になるし、勿論産卵期の疲れたマグロより味も良い。この様な資源の無駄使いを頑なに続けさせている水産庁は、天下り先が・・・等と言われても仕方があるまい。産卵期の、特に巻き網漁は一刻も早く終わらせなければならない。
マグロの資源管理の難しいもう一つの特徴として、地域や漁法によって捕る時期が違う事が挙げられる。例えば2017年は全体で5000トンまでの漁獲にしましょうと決めたとする。仮に1月1日から12月31日の期間で管理したとして、10月までに5000トンを捕ってしまったとする。もしかしたら、12月の一番値が付く漁期にマグロを捕る事で生計を立てている漁業者がいるかも知れない。その漁業者からすれば、漁期が始まる前に、自らの責任では無い漁獲過剰により、終わってしまったと言う事になる。こんなに不条理な事は無い。因みに太平洋クロマグロに関しては、日本の漁獲過剰、消費過剰のせいで他国に迷惑をかけている事も忘れてはならない。
マグロだけに限った話では無いが、水産資源管理の難しさの一つに、マグロだけを狙って捕っている訳では無いが、マグロも捕れる事もあると言う定置網もある。定置に限らず混獲は多くあるが、今回の会議で実際に定置の関係者から声が上がっていた。マグロの漁獲上限に達してしまったので、漁獲を止めてくれ・・・と言われても、マグロが勝手に入って来てしまう。入ったマグロをリリースする事は困難と言うか不可能。死んだマグロを捨てろと言うのか?入って来てしまうマグロを捕らない様にと、最終的には網を上げてしまうしか無いのだが、それでは生活が出来ない。そんな声も上がっていた。水産庁の答えとしては、定置網と一概に言っても、小型の沿岸魚を狙ったモノから、大型のマグロを狙って捕獲する定置網まで様々あり、実態に応じて対応するとの事だった。私個人の意見としては、日本の沿岸には定置網が多すぎると思っている。漁業者の数が減っていると言われる中、魚の良く捕れる定置網はお金になる既得権として一向に減らない。今後は定置網が資源に与えているインパクトも少しは考え、資源に見合った数と場所に絞る事も必要になるのかも知れないと思った。この様な事を書くと、定置網の関係者から怒られそうだが、日本の海岸線を埋め尽くすかの様に並ぶ定置網は、行き過ぎではないだろうか?減らせば海がかなり回復すると思うのは、私の誤解だろうか?
資源を回復させるには何が必要か?実はここからが私の書きたい本題だったりするので、もう少し読み進めて欲しい。
まず、水産庁に与えられている役割は何なのか?水産庁とは“水産物の安定供給の確保及び水産業の健全な発展に向け、水産に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため”(水産庁ウェブサイトより抜粋)の組織だそうだ。水産資源の維持管理もその一部として必要なのだが、大前提として水産物を供給し続ける事が先にある。これは水産庁の組織としての役割なので、水産庁はこれに基づいた仕事をする。
私個人の意見なのだが、そもそも、水産資源の維持管理を、つまり利害当事者が、自己都合を最優先させながら管理するというのには無理があると個人的には感じている。水産資源は地球環境の一部分。環境や資源を守るのは環境省。その枠の中で利用するのが水産庁と現場の漁業者。この構図の方が資源管理をやりやすいのではないだろうか?環境省が環境保全の一部として、水産資源の維持管理の大枠、つまり資源量の把握やTAC(total allowable catch)を設定し、その与えられたTACの中でどの様に最大限有効利用するのかを水産庁が考えて決めると言うのが資源の維持管理をやりやすい構造なのではないだろうか?
現状では全国様々な地域、漁法の関係者から色々と違った意見が出される中、出来るだけ不満の出ない様に、出来るだけ補償金を請求されない様に漁獲規制は控えめに・・・と対応している結果、多くの水産資源の資源量が低位で安定、若しくは減少に歯止めがかけられない状態となってしまっている。太平洋クロマグロの資源量が残り2.6%となってしまっても、水産物を国民に供給し続けるために捕り続けるのが水産庁の仕事。資源管理の先進各国なら即時禁漁となる数字なのだが、水産庁の役割は水産物を国民に供給し続ける事が仕事なので、出来る限り多く捕り続けるのを前提で資源管理をしようとしている。これでは上手くいくはずが無いと個人的には感じている。資源量の把握と資源管理は、環境省が環境と資源を守る事を第一優先として決定し、そのTACの中で、水産庁が国民に水産物を安定供給するために枠内で最大限の利用を考える仕事をする・・・と言う構図の方が確実に資源管理は上手くいく。同じ組織内で、相反する二つの事は解決できない。勿論、環境省の決定事項優先で、その下で水産庁と言う構図でなければならない。
今回の会議で、漁業者から釣り人への規制を求める声が上がっていた事も記しておきたい。漁獲量の上限に達し、漁業者がマグロを捕るのを止めた後も、釣り人は船を繰り出しマグロを遊びで釣っている。(実際には釣れて無くても漁業者の目には釣っていると映るし、実際に釣り上げる事もある)漁業者が身を切る思いで資源管理に協力する形でマグロを捕るのを止めている間に釣り人がマグロを釣っている事を良く思わない漁業者が居るのは当然の事だと個人的には思う。
これに対し、釣り人としての言い分は、釣り人が年間に釣り上げているマグロの量はおよそ15トン程度と推測されているが、2014年のデータで言うと漁業者は30kg以上の大型魚を3526トン、30キロ未満の小型魚を6078トン、合計すると9604トンを漁獲している。これに比べると現状のほぼ規制無しでの15トンは微々たるモノで、資源量に与える影響は漁業者のそれと比べると少ない。規制すべきは漁業者の漁獲圧であって、遊漁者の無いに等しい漁獲圧では無いとの意見が釣り人からは上がっている。
こういった漁業者と遊漁者の漁獲規制を巡る問題は資源管理先進国であるアメリカでもおきていて、アメリカの管理の事例で言うと、漁業者と遊漁者にはそれぞれ別枠での漁獲上限が定められており、それぞれが上限を超えない範囲で漁業、遊漁に取り組んでいる。勿論、遊漁が捕り過ぎたからと言って漁業に規制がかかったり、またその逆の漁業が捕り過ぎたからと言って遊漁に規制がかかったりする事は無い。ただし、資源量の推移に応じてこれらの漁獲枠は毎年見直されるので、どちらかが捕り過ぎた結果、翌年の漁獲枠が全体として小さくなると言う事は起きていて、漁獲枠を減らす際にはどちらにより責任があり、翌年の漁獲枠を決める際に、どちらをより減らすか、と言う事については双方の立場の代表が出席する会議にて激しく論争になる点でもある。勿論、双方の不満を抑えられないからと言って、全体の漁獲上限を引き上げる様な愚は犯さない。TACの範囲内での論争だ。
近頃話題に上る事の多い、個別割り当て制度と呼ばれる資源管理の方法を採れば、遊漁には遊漁の漁獲上限、漁業者にも地域や漁法毎の漁獲制限を設ける事で、他者の漁獲過剰による不当な漁獲制限を防ぐ事が出来る。船毎に漁獲量を割り当てれば、一漁業者が漁獲出来る魚の量が先に決められているので、値のつく時期を狙って漁をするという事も出来る。この個別割り当て制度については、詳しく記載している文献やウェブサイトが他にもあると思うので、各自調べてみてほしい。
遊漁の立場からの個人的な意見を少々書きたい。これはあくまでも私が個人的に考えている事であり、遊漁者全体の意見では無いが、各自が色々と考える時に参考になればと思い、記述する。
漁業者だけでなく、遊漁者にとっても資源の減少は避けたい事態だ。特に最近人気のルアーキャスティングによるクロマグロ釣りは、極めて非効率的な釣り方であり、20回以上通って一匹釣れれば御の字のターゲットではないだろうか?このただでさえ釣れない釣りに、漁獲規制をかける必要があるのかどうかと言う議論もあるが、私は遊漁に関しては釣りをさせるか否かの漁獲規制ではなく、他の規制で十分に資源維持管理の効果を発揮すると考えている。
例えば現状で既に釣り人から自主規制の声が上がっている産卵期の産卵場所での禁漁や、30kg以下のクロマグロのリリースでも良いかも知れないし、トレブルフックやカエシのついた針の使用を禁止にしても良いかも知れない。撒き餌等の使用を制限、又は禁止にするのも手としてはあるのかも知れないし、餌釣りの場合はサークルフックを義務化する事も手としては考えられる。これらの事は、既に実践している遊漁者が多い事も記しておきたい。
私が常日頃から感じている事の一つとして、遊漁者は漁業者の敵であってはならないと言う事がある。釣った魚を売る、買い取ると言う行為が合法的にまかり通っているのが今の日本だが、漁業者に漁業権を認めながら、裏では漁業権を持たない者が魚を釣って売る事が許されているなんて、おかしな話である。漁場における漁業者優先よりも、まずは遊漁者に魚を売らせない事が先決ではないだろうか?ルールが無いからと言って、遊漁者が釣り上げた魚を売る事は断固として控えるべきである。
釣り上げた魚を売る事だけが問題では無い。もう一歩踏み込んで考えてみたい。釣り上げた魚を美味しく食べる事は、遊漁の楽しみの一つではあるが、行き過ぎは漁業者の生活を圧迫すると言う事を頭に入れておきたい。釣り上げた魚を一切持ち帰らなければ、魚が食べたい時には市場に出ている魚を買う事になる。この、本来ならば売れるはずの魚を、遊漁者が勝手に釣ってくるモノだから、売れるはずの魚が売れなくなる。遊漁者がその日に釣った魚を美味しく食べる位の楽しみは奪う必要は無いと思うが、冷凍庫にギッチリ釣った魚を詰め込み、魚は全て自分で釣ったモノで賄い、一切買わない・・・となると、一世帯分の市場が無くなる事になる。近所の方や、知り合いに配る人もいると思うが、何気ないその様な行為が水産市場を少なからず圧迫している事は間違いない。日本にはまだ遊漁者のフィッシングレギュレーションなるモノが殆ど導入されていないが、近い将来、バッグリミット等を設けて遊漁者の持ち帰り匹数を大きく制限する事で開かれる水産市場も多少なりともあるはずである。
話が今回のトピックであるクロマグロから逸れたので少し戻そう。漁業者から不満の声も上がっている事もあるので、上記の様なフィッシングレギュレーションをクロマグロに導入してみてはいかがだろうか?まず第一歩目がフィッシングレギュレーションなのだが、もう一歩踏み込んで考えてみたい。海外の事例で言うと、遊漁者が釣り上げたマグロを船のモノとしている例もある。日本でも例えば遊漁者が釣り上げたマグロは、基本的には漁協に提供しなければならない様なルールがあったらどうだろう?こうなれば、漁業者と釣り人が対立する構造も避けられると思うがいかがだろうか?そもそも、例えば50kgのマグロ、一般家庭に持ち帰っても持て余すだけである。100kgやそれ以上のマグロとなると、家庭に持ち込む事すら大変だ。上記した様に、売り払ったり、お店に提供する事は、間接的に漁業者の仕事を圧迫する事になるので避けるべきである。釣り上げた魚をどうするのがベストなのか?資源の事を考えるとリリースなのだが、そもそも少ない釣り人の漁獲を全てリリースしても、効果はたかが知れているし、釣り針で傷ついたマグロを生存率高くリリースするには、慣れも必要。全ての遊漁者が生存率の高いリリースをするのは難しいかも知れない。やはり資源の事を考えると漁業者の漁獲を減らすしか手は無いのだ。そして、その漁業者は遊漁が自由に釣る事を快く思っていない。となると、遊漁の漁獲をルールとして全て漁協に提供すれば、遊漁は漁業者の敵では無くなるのかも知れない。もしかしたら、事はそんなに単純では無いのかも知れないが、現状では遊漁者は漁業の邪魔でしか無いのだ。
プレジャーボート等がこっそり釣り上げて持ち帰る様なケースも考えられるが、少なくとも遊漁船等で釣り上げたマグロは漁協のモノとなれば、遊漁者を多少なりとも歓迎する漁協も出てくるかも知れない。遊漁者は堂々と釣りが楽しめるし、大きなマグロを持ち帰って家で途方に暮れる事も無い。プレジャーボートの問題にしても、現代の情報網とプレジャーボートの帰発着地点の協力体制があれば、およその不正は防げるだろう。レギュレーションの導入で何よりも重要なのは、取り締まりを行う事である。水産庁も自主規制やお願いに頼らずに、罰則と厳しい取り締まりを伴う規制を導入すべきだと私は考えている。自分の釣り上げたマグロが食べたければ、マグロの行方をトレースして食べようと思えば何処かで食べれる、買える様なシステムがあっても良いと思う。自ら釣り上げた魚でも、持ち帰るには買い取りというシステムでも良いのかも知れない。魚はあくまでもお金を払って食べるモノという事で良いではないか。実際に管理釣り場等では遊漁者が釣り上げた魚を持ち帰る場合は、追加料金で買い取りというシステムが運用されている事も記しておきたい。
遊漁者の釣り上げたクロマグロを漁協に提供、もしくは買い取りと言う案には、ふざけるな!という釣り人の声も聞こえて来そうではあるが、あくまでもこれから先の遊漁の在り方を考える一つの案として提案してみた。この案には賛成出来ない遊漁者も数多くいる事は間違いなく、私個人の考えなので遊漁者全体の声を代表するモノでは無い。私は現時点ではクロマグロ釣りをやらない部外者なのだが、いつか釣りたいターゲットではある。そのいつか挑戦する際に、釣りを楽しめる環境を維持していく事が最優先事項であり、釣り人と漁業者が対立した結果、遊漁が禁止される様な事は断固として避けたいのだ。何もかもが自由というのは、漁業者にとっても遊漁者にとっても理想ではあるが、資源の量や漁場の狭さを考えると完全にノールールでは事が立ち行かないから規制が必要なのだ。そして規制をかけていく中で、何が優先で、何を譲れるのかを良く考え、例えば遊漁者なら、水揚げよりも、釣りという行為の中でのドラマだったり喜びだったりといった事の方が重要という事になる。カナダのPEIの事例の様に魚を船にあげる事すら許されなくても、釣り人は大喜びで大金を払ってマグロを釣りに行くのだ。釣りが出来る事と豊かな漁場を維持する事、この二つが本当に重要な事項ではないだろうか?釣った魚を持ち帰る事は、一番に放棄しても良い事項だと私は考えている。その放棄する魚をリリースするのか、漁協と上手くやるために漁協に提供するのかは議論を重ねた方が良いと思う。資源の事だけを考えるとリリースの方が良いのだが、遊漁者が漁業の邪魔と言う構造はこれでは変わらない。遊漁者のリリースに頼らずに漁業も含めた全体で資源管理をした上で、遊漁者の釣り上げたクロマグロは漁協に提供、もしくは買い取りという手もあるのかも知れない。
またもや長々と書いてしまいましたが、最後まで目を通して下さった方が、少しでも日本の遊漁にまつわる水産資源の維持管理について考えるヒントになれば幸いです。私の意見が遊漁者の意見の代表ではありませんし、私の意見が全て正しいとも思いません。私も今後どの様な方向に動くのが一番良いのか、頭を悩ませている最中の身です。ただ、日本の水産資源管理のやり方に現状では問題があるのは間違いありません。より良い未来に向け、一人一人の意識がまず変われば・・・と思います。